面談記録を書いていると、「次に面談があれば、これを聴いてみよう」と思うことがあります。
いえ、毎回思います。
これは私の技術不足が原因でもありますが、今のところは「似たようなケース」や「次の面談」に備えるために振り返っているのが現状です。
しかし、私は外部委託されている身です。継続して面談者に関われるかどうかは、その企業の判断に委ねられます。
それならば——
一度の面談で、全てを聴き切ってしまえないだろうか?
全てを聴き切れなかったとしても、私にできる工夫は他にもあるのではないか。
そう考え、私自身がコントロールできることを整理した結果、4つの案にたどり着きました。
これは私の実体験から出たもので、教科書的な正解かどうかは一旦置いておきます。
案1:事前情報からの予測と下調べ
面談前には、ある程度の事前情報をいただけます。
現在もそれをもとに準備をしていますが、そこに「振り返り」で得た気づきをもとに、さらに精度を上げられるのではないかと思いました。
たとえば、「この点は聴いておくべきだった」「これは実は問題ではなかった」といった気づきから、その点を事前情報から読み解けるかどうかです。
科学的に誤った認知に注目したいところです。
科学的に証明されていることは、多くの人に偶然の効果以上に効果があります。
たとえば、「仕事が終わらないから寝ずにやる」というケース。
本当は「寝ないから頭が回らず、仕事が進まない」というのが正しいかもしれません。
こうした思い込みに、事前情報の時点で気づけることもあります。ただし、情報には食い違いもあるため、直接確認する姿勢は忘れずに。
そして、確証バイアスにも注意が必要です。
案2:衛生講話でアフターケア
衛生講話は、健康経営に役立つ情報を講義形式で伝えるものです。今までは「季節性」や「企業の課題感」をもとにテーマを選定していました。
しかし最近は、面談者の悩みからテーマを拾ってみるのも良いと感じています。
企業に長く関わっていると、企業ごとに面談者の傾向も見えてきます。
- 在宅勤務が多く、通勤による運動が減る企業
- 人間関係の負担が大きい職種
- 心身の不調が比較的少ない企業
20分という限られた面談時間では、問題を特定したあと、専門知識まで届ける余裕はなかなかありません。
そこで、衛生講話の議事録を参考資料として使ってもらうというアプローチが考えられます。
もちろん、本人に調べてもらうのが理想ですし、AIの活用も有効です。
しかし、情報の取捨選択は意外と難しいもの。だからこそ、私の出番です。
案3:衛生講話でリアルタイムケア
現状、衛生講話は衛生委員会のメンバーしか聴けない仕組みになっていることが多いです。
しかし、委員会メンバーが必ずしも面談対象者とは限りませんし、委員の人数も限られています。
他の従業員には議事録で内容が伝えられますが、それでは質問ができず、個別の悩みに対応することもできません。
それなら、講話に関心のある人が参加できる仕組みを作れないでしょうか。
企業側が「ぴょん吉(私)は多くの人前で話すのが嫌いかもしれない」と思っている可能性もありますが、そこは一度提案のチャンスをうかがいたいところです(業務範囲外と委託元に注意されそうですが)。
講義を動画で残しておくというのも良いかもしれません。
案4:面談記録でアフターケア
記録で私が出来なかった点に言及して、何かしらフォローをお願いする。
この点は、個人的推測が出やすいため、避けていました。
看護師は診断を下すことは出来ないので、個人的な決めつけで面談者を下手に誘導することは避けなければなりません。
あくまで客観的情報の収集が大前提で必要なのです。
診断の代わりに出来る事としては、症状を聴き取り①受診勧奨を行うか、②産業医に繋げることでしょう。
次の専門家につなげるという点では、この二つは有効です。
他にも看護師にできる支援方法は以下の通りです。
- 情報提供
受診勧奨を含む - 教育
- 指示
- カウンセリング
- 助言
- コンサルテーション
畑中純子 監修『職場のメンタルヘルス 予防・対応・支援のすべて』を参考にぴょん吉作成
そして、看護職面の最終目標は以下の通りです。
最終的には、産業看護職の実際の支援がなくても、対象者が自らセルフケアを実践し、生き生きと働くことができることを目指します。
畑中純子 監修『職場のメンタルヘルス 予防・対策・支援のすべて』 Part2 早期発見・早期対応のポイント
メンタルヘルスの本ですが、身体の不調にも同じことが言えると思います。
そして面談者が自らセルフケアを実践し、生き生きと働けるまでは、誰かしらが伴走する必要があるのではないでしょうか。
会社の誰か・産業医・医療機関・企業看護師がそれにあたります。
一回で聴き切るのではなく、一回で一旦繋げる
具体的には情報が不足していることは認めつつ、「○○が考えられますので、継続支援をお願いします」と記録にしたためることになるでしょう。
いえ!
これはどこかしらの支援先を明示するのを必須にした方がいいかもしれません。
面談記録には『産業医面談は不要』と書くことが多いのですが、産業医面談が必要でないなら、そのままほっといて良いのか、誰かの支援が必要なのかを明示する。
必然的に面談者にもお伝えすることとなります。
具体的な繋げ先は以下があります。
- 産業医
就業措置に絡む時(基本的に診断は下せない) - 医療機関
休職など診断がらみ、疾病による受診のケース - 地域の保健師
生活習慣病などで地域でフォローが必要なケース - 人事部
異動、環境整備など企業で出来る事があるケース
ほっとける状態だが、定期的にチェックをしてほしいケース - 産業看護師(私)
上記のどれにも該当しないケース - その他
専門的な外部からの支援など
こうみると産業看護師の面談の意義は面談者の繋げ先の仕分けにある気がしてきました。
看護職面談は面談者の第一次的なセーフティネットともいえそうです。
何かしら異常がある人をどこにもつなげないのは、健康経営面では危ないからです。
プロとしてはありえない行為です。
どこかに繋げることを看護職面談のゴールにして、その後を確認するために会社か看護師が定期的に面談するのが良さそうです。
『会社がその後の様子を確認して、アクションを取れていなければ、必要に応じて看護職面談に再度繋いでいただき、必要な支援を行う』
特に医療機関の受診勧奨後の未受診は、間違った自己認識や受け入れが不良な場合が考えられるので、私や産業医の出番です。
もちろん自己改善出来ていれば、それで良しです。
次に繋げるためのアクションプラン
次の専門家に繋げるためには、面談者との信頼関係が必要になります。
信頼関係を築くためには、お話しをある程度は聴くことが必要です。
ですが、現実的に『聴く』に充てられる時間は前半の10分程度でしょうか。
問題を抱えている面談者には『一番問題だとおもっていることは何か』『どうしたいか』『どうなってほしくないか』を直接たずねるのが良い気がしています。
そこから問題について深めていけるようにお聴きする。
聴いている過程で、面談者の思考が深まる。
問題が問題じゃなくなる可能性だってあります。
面談を20分で一旦完結するためには話しはしていただくが、対話の主導権は私が握り続ける必要があるでしょう。
事前に「時間的関係で、メインの話題はひとつしか扱えない可能性が高い」ことを伝えるのもよさそうです。
どれもこれも技術が必要ですね。
こうみると私にコントロール出来る事がまだまだたくさんあることが分かります。
おまけ:AIにも聴いてみた
chatGPTとperplexityにも相談してみました。
私の印象では、chatGPTは推論が得意で壁打ちに向いており、perplexityは情報源が明示される点で調査に向いています。
お二方に「20分で信頼関係を築きつつ、客観的な情報も収集したい」と相談したところ、以下の提案がありました。
- 面談者本人からの事前情報収集
睡眠、食事、リフレッシュ方法などの客観的情報 - 相手側の事前準備
面談目的意識、自分の棚卸と言語化 - 面談前に「こういうことを聞くと役に立つよ」のアナウンス
面談者は「看護師は何を聴いてくれて、何を話してくれるか」をしらないのではないか
これらはどれも、面談外で準備できることです。
しかも、面談者にとっても思考を促す良い機会になるでしょう。
私の一存ですすめられないことばかりですが、一考の余地はありです。
さいごに
看護職面談の最終的なゴールは『産業看護職の実際の支援がなくても、対象者が自らセルフケアを実践し、生き生きと働くことができる』です。
宣伝っぽくなって恐縮ですが、看護職面談とは『人生を攻略するためのお手伝い』かもしれません。
それにしても面談者に継続的に関われないことが、こんなに口惜しいなんて思ってもみませんでした。
「まあ、面談者と企業が幸せになってくれれば、私が直接関わらなくてもいいんだけどね」
…….フラれた男の捨て台詞っぽい締め方で申し訳ありませんが、今回はこのあたりで。
おすすめ記事
1on1では『『伝える』ために『聴く』必要がある』と力説した記事はこちら↓
聴いてるだけでは進まないこともある|聴く人の独り言1
面談の向こう側にある『人生の攻略』って何?と思った方におすすめの記事↓
幸福のループを発見!!理屈っぽい主夫が読書で世の中の原則を勉強し、人生を攻略するブログ
コメント